手漉き和紙のはなし

和紙の原料の「楮(こうぞ)」

  • 2018.11.30 update
  • 手漉き和紙のはなし

石州勝地半紙の主な原料は「楮(こうぞ)」というクワ科の植物の繊維です。

楮の一年物の枝のみが和紙の原料として使われます。

5月の初旬には、まだまだほんの数センチくらいの新芽が、夏には3m以上に成長し、11月の下旬頃の刈り取り時には4mくらいに成長しています。

その枝の一本一本をすべて手作業で刈り取ります。

 

毎年12月の初旬頃から、

一年分の原料を 刈り取り → 蒸す  → 皮を剥ぎ干す

「そどり」と呼ばれる作業を行います。

 

刈り取った楮の長さを切りそろえ、「甑(こしき)」と呼ばれる

大きな桶をかぶせて4時間ほど蒸し上げます。

 

甑から蒸気が出始め、竈の薪が赤々と燃える光景は風情があります。

昔はこの辺り一帯の家々から、この時期にこの光景が多く見られたものと思われます。

楮が蒸されると、甘いまるでさつま芋のような匂いに包まれます。

 

4時間ほど蒸した楮は、一本ずつ皮を剥ぎ、束ねて天日干しをします。

和紙は楮の周囲の靭皮繊維(じんぴせんい)のみが紙となります。

対して洋紙は、中の木質部も含めて強い薬品で煮溶かして紙となります。

 

一度乾燥させた楮をもう一度水に戻し、黒皮を取り除く「へつり」という作業があります。

表面の黒皮や「どべ」と呼ばれる部分を包丁で取り除き、そしてもう一度干して乾燥させ、保存をする。というのが本来の昔ながらの工程です。

昔は人手が多かったので、こういった作業もすべて行われておりましたが、現在私たち夫婦2人で、刈り取りから蒸して皮剥ぎ作業まですべて行っているため、へつり作業を軽減するため、皮剥ぎ作業の時点で、主に表面の黒皮を落とす作業も同時に行っております。

石州の和紙の特徴として、表面の黒皮と繊維の間の甘皮部分を少し残し、繊維と一緒に漉くことにより、水に強く、にじみの少ない丈夫な和紙となります。

和紙を布でも皮でもない第三の素材として
世間にもう一度問うてみたい。

New Material Project

紙布

information
この地域では古くから紙布という、和紙を細く裁断し、撚って糸にし、布に織るという「紙布」の文化がありました。
麻が高く手に入れることが困難な時代に、紙布は、蚊帳や畳の縁、野良着、着物の反物、コタツ布団など日常のものとして多く使われていました。
ジーンズよりはるかに丈夫な紙布。
この紙布を近い将来、商品化したいと思っており、糸を作る段階まで来ております。

和紙でできた猫ハウス・猫ベッド

information
和紙は漉き重ねると、同じ厚さの木材より強度が高いという、和紙という言葉からは想像がつかない特性があります。
その厚く漉き重ねた和紙で猫ハウスや猫ベッドをつくりました。
骨組も一切入っていない自家栽培の石州楮100%の商品。
何より、化学的な糊やボンドなどは一切使用しない昔ながらの製法で作っております。
ペットというより、家族の一員である猫ちゃんに優しい和紙製です。
表面が汚れたら、表面だけを張り替えるリペア可能な商品ですので、一生ものです。