石州勝地半紙の主な原料は「楮(こうぞ)」というクワ科の植物の繊維です。
楮の一年物の枝のみが和紙の原料として使われます。
5月の初旬には、まだまだほんの数センチくらいの新芽が、夏には3m以上に成長し、11月の下旬頃の刈り取り時には4mくらいに成長しています。
その枝の一本一本をすべて手作業で刈り取ります。
毎年12月の初旬頃から、
一年分の原料を 刈り取り → 蒸す → 皮を剥ぎ干す
「そどり」と呼ばれる作業を行います。
刈り取った楮の長さを切りそろえ、「甑(こしき)」と呼ばれる
大きな桶をかぶせて4時間ほど蒸し上げます。
甑から蒸気が出始め、竈の薪が赤々と燃える光景は風情があります。
昔はこの辺り一帯の家々から、この時期にこの光景が多く見られたものと思われます。
楮が蒸されると、甘いまるでさつま芋のような匂いに包まれます。
4時間ほど蒸した楮は、一本ずつ皮を剥ぎ、束ねて天日干しをします。
和紙は楮の周囲の靭皮繊維(じんぴせんい)のみが紙となります。
対して洋紙は、中の木質部も含めて強い薬品で煮溶かして紙となります。
一度乾燥させた楮をもう一度水に戻し、黒皮を取り除く「へつり」という作業があります。
表面の黒皮や「どべ」と呼ばれる部分を包丁で取り除き、そしてもう一度干して乾燥させ、保存をする。というのが本来の昔ながらの工程です。
昔は人手が多かったので、こういった作業もすべて行われておりましたが、現在私たち夫婦2人で、刈り取りから蒸して皮剥ぎ作業まですべて行っているため、へつり作業を軽減するため、皮剥ぎ作業の時点で、主に表面の黒皮を落とす作業も同時に行っております。
石州の和紙の特徴として、表面の黒皮と繊維の間の甘皮部分を少し残し、繊維と一緒に漉くことにより、水に強く、にじみの少ない丈夫な和紙となります。